就労ビザ(技術・人文知識・国際業務ビザ)を取得するための要件

「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得しようとする時に気を付けたいことは、全てのビザについて言える事ですが、それぞれのビザについての要件を満たす必要があります。その要件がクリア出来なければ、いくら申請しても不許可になります。

また、日本に長期在留するためのビザにおいて単純労働を認めるビザはありませんので注意してください。

単純労働とは、トラックの運転手、飲食店でのホール仕事、建設現場での作業、工場内でのライン作業員、コンビニ等でのレジ打ち、といった労働です。

例外として、日本人の配偶者ビザ、永住者、永住者の配偶者ビザ、定住者ビザは就労制限がありませんので、単純労働でも就労することができます。また、資格外活動許可を取得している留学生等は一定の条件のもとアルバイトをすることは可能です。

※1.平成31年4月より、在留資格「特定技能」が創設され、一定の分野における現場労働が認められるようになりました。詳しくはこちら。

※2.令和元年5月30日より、一定の要件を満たす外国人留学生(大学卒業者等)は、飲食店や小売店などでの接客業が認められる告示改正がありました。詳しくはこちら。

本日は外国人労働者を正社員として雇用する際、よく取得される「技術・人文知識・国際業務」というビザについて触れたいと思います。ちなみに、ビザと在留資格という言葉は意味が違いますが、なるべく分かりやすくするため、「ビザ」という言葉で説明しております。


「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するための要件

「技術・人文知識・国際業務」ビザとは次のような活動が該当します。

「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」

簡単にいいますと、日本で就職した外国人の方で、理科系の仕事文科系の仕事をする活動に該当する人か、ということになります。

該当する職業は次のような職種となります。

・機械工学等の技術者

・エンジニア

・プログラマー

・営業

・貿易

・総務

・経理

・マーケティング業務

・通訳翻訳

・デザイナー

・商品開発

・広報宣伝

・私企業の語学教師

といった職業です。いわばホワイトカラーと言われる仕事です。

まず、こういった活動に該当するかどうか確認する必要があります(在留資格の該当性とも言われます)。

そして次に重要なのが学歴若しくは職歴です。

➀従事する仕事と学んできた事がリンクするかどうか。

今までの学歴で、大学、大学院、短大、専門学校(日本のみ)を卒業した経歴がある場合、その学んできた内容と、これから従事する仕事に関連性がなくてはいけません。ちなみに、日本語学校は最終学歴になりませんので注意してください。

今まで大学等で学んできた事 = 仕事に生かせる(学んだ専門知識が生かせる、関連性がある)

②従事する仕事について一定年数(業務により異なる)の経験があるかどうか。

➀のような学歴がない場合(高校卒業までの方)の場合は、同じ業務についての実務経験年数が必要です。細かい要件(実務経験年数)は従事する職業によって違ってきます。


「理科系・文科系の業務について」

申請人(外国人)が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務(理科系・文科系の仕事)に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を習得していること。

イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。

ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了したこと。

ハ 10年以上の実務経験を有すること。

イとロについては、外国人の方が大学や日本の専門学校で学んだ事を、業務に生かせますか、関連性がありますか、という事を聞いています。まったく学んできたことと関係がない仕事は出来ないし、そういった場合、技術・人文知識・国際業務ビザは取得できません。

また、ハについては、従事しようとする仕事について、10年以上の経験がありますか、という事を聞いています。10年以上の経験がない場合は技術・人文知識・国際業務ビザは取得出来ません。

イ、ロ、ハどれかに該当する必要があります。

ちなみに大学は短期大学、大学院が含まれます。専門学校は日本の専門学校(専門士と称することができること)のみです。

「外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務について」

申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。

イ. 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。

ロ. 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りではない。

イのような仕事をするときは、3年以上の実務経験が必要です。しかし、翻訳、通訳、語学の教師といった仕事をするときは、大学を卒業していれば、要件を満たします。ただし、通訳、翻訳、語学の教師をするといっても、その外国人の方の母国語である必要があります(中国人の方であるならば中国語、韓国人の方であるならば韓国語、アメリカ人であれば英語)。

また、イのような仕事をするときに必要な専門科目を、大学等において学んで卒業した方は、3年の実務経験は必要ありません

今まで大学等で学んできた事 = 仕事に生かせる(学んだ専門知識が生かせる、関連性がある)

ということになります。

以上の事から、学業又は職歴が、従事する仕事とリンクすることが重要です。リンクしなければ技術・人文知識・国際業務ビザの取得は出来ません。

企業側としては、上記に記載した「大学等でどういった事を学んできたのか」、「従事してもらいたい仕事と関連性があるのか」という事を確かめるためには、履歴書の他に、大学等の「成績証明書」等を確認する事がよいと思います。また、人によっては大学を2校卒業した人や、専門学校を2校卒業した人等、複数の大学、専門学校を卒業する人もいらっしゃいます。そういった方の場合、複数卒業した学校の中から、専門性や関連性を証明することができれば良いので、最終学歴のみで判断しない事が重要です。こっちの学校では関連性・専門性はなさそうだけど、あっちの学校では関連性・専門性がある、といった事もあります。


➂給与は日本人と同等に!

どの職業にも当てはまることですが、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることとされています。給与は日本人と同水準以上で支給する必要があります。外国人だからといって給与に差をつけてはならないと規定されています。


➃その他

受入企業も、審査の対象となります。事業の安定性、事業の継続性等を有しており、その外国人を雇用しても問題ないことを示す必要があります。


➀~➃までの事を踏まえ、申請書を作成しビザを取得することになりますが、先に外国人の方との雇用契約を結ぶ必要があります。

外国人留学生の方の就職活動から実際にその企業で働くまでの流れとしては、

➀就職活動(外国人) ⇒ ➁企業での試験、面接 ⇒ ➂雇用契約の締結 ⇒ ④ビザの申請(認定または変更申請) ⇒ ➄入管からの許可 ⇒ ⑥学校の卒業 ⇒ ⑦就職

といった流れだと思います。ビザ取得が出来るかどうかも視野に入れ、計画的に進めることが重要になってきます。

新規に技術・人文知識・国際業務ビザを取得したときは、大体、ビザ期間1年です。更新についても忘れないように気を付けましょう。

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